ソフィの父の仇であるとしてその命を狙われることになったアルフェンディ・レイトン。
だが4年前の事件から彼女が殺害計画を実行するまでの間に4年の歳月がかかっている。

ここでは二重人格であるアルフェンディ・レイトンのそれぞれの人格を指すにあたり、ファンの間で呼称されている名を使用していく。

  • いつもの教官:白アル
  • 悪い教官:黒アル

考察内容一覧

4年前の事件の処罰裁判と親子関係降格処分 / 招待状ヒルダとの関係 / 4年前の事件後、すぐに命を狙わなかった理由

4年前の事件の処罰

あの日、何が起こったのか今でも鮮明に覚えている。
だから4年前、僕は証言台に立ち、その全てを正直に話したのさ。

File.9 アルフェンディ・レイトン/白アル

I remember everything like it was yesterday.
When I was invited to the docks,naturally I told the court everything.

同シーンの台詞 英語版

イギリスは1965年より死刑廃止国である。
犯人を射殺するケースは見受けられるが、基本的に射撃は脅威を退けるために行われる。
イギリスでは免許及び警察に届け出の無い者の銃の個人所有は禁じられており、警察官も基本的に銃を携帯しない。
しかしこれは2018年現代の話である。MRの世界観を1970~80年代前半とするならば銃の個人所有は禁じられておらず、警察の内情も異なるのだろう。
だがいずれにせよ、アルフェンディが己の快楽のためにいたずらにバドリオを追い詰め銃殺したのであれば、これは殺人罪の適用となる。
イギリスでの殺人による刑期は最も重いもので終身刑。約16年の懲役刑が平均である。例外的な緩和要因があれば10年以下の懲役となる。例として、自殺幇助により殺人罪で有罪判決を受けた人物が3年7カ月で釈放されたケースがある(参考

白アルは裁判所の証言台で己の罪を(実際には偽の記憶であるが)告白している。
裁判所での結果がどういったものかはゲーム中で明らかになっていない。
考えられる可能性は

  • 有罪判決が下され、ルーシーが配属されるよりも随分前に釈放された
    ┣a.バドリオの凶悪性から
    ┣b.二発目にバドリオを貫いた弾が心臓にあたったのは偶然であるとみなされた
    ┗c.アルフェンディがバドリオの命を狙うのに正当な理由が認められた
  • 不起訴処分となった
    ┣d.全てが証明されきれなかった
    ┣e.二重人格となった彼の証言には曖昧な点や矛盾が見られ、十分に信用されなかった
    ┗f.教授もしくは教授の関係者が不起訴処分を勝ち取った

これらの可能性のうち、もっとも考えられるのはdの理由による不起訴処分である。
実際、この事件は二度目のラドモンド城事件が解決するまで、全てが明らかになってはいない。
ヒルダらはアルフェンディを殺人者として扱いながらも、全てを知ってはいないのだ。

お前達が知りたがっていた真実に、この俺が導いてやろうと言ってるんだ。ありがたく思え。

File.9 アルフェンディ・レイトン/黒アル

レイトンさんなら、来てくれますよね?
だって、ラドモンド城でなにがあったのか、知りたいんでしょ?

File.7 ソフィ・キンケイド

ソフィ自身もこのように言うことでアルフェンディを挑発している。
だが白アルはあくまで自分が犯人であり、全てを知っていると思い込んでいる。
「ラドモンド城で何があったのかわからない、知りたい」と思うことは己の記憶への否定である。
File.7時点での彼がその言葉を口にすることはないだろう。
ならばソフィは何故「アルフェンディ(黒アル)は何があったのか知りたいと思っている」事を知っているのか?
何かと判然としない裁判の中、黒アルがこの言葉を発したのではないだろうか。

だがあくまでこれは最も可能性が高いというものであり、abcに加え二重人格になったことなどの理由から極めて短期間で釈放された可能性もあれば、a~fのすべての要素が重なっての不起訴処分の可能性もあり、これらと全く異なる事情もまた考えられる。

裁判と親子関係

I am the real Al.
I’m Alfendi Layton.

“Forget Hershel!”
“The one and only”
“I AM LAYTON!”

File.9 アルフェンディ・レイトン/白アル(英語版)

裁判においてこの手を使ったか否かは定かではないが、アルフェンディが不起訴処分を得る最も勝率の高い方法は、エルシャール・レイトンが弁護側として立ち
「彼はラドモンド城事件以前の25年を生きてきたアルフェンディ・レイトンではない」
と証言し、白アルの証言の矛盾点をすべてつきつけ、証明しきれていない点を上げ連ねることである。
だがこの方法を使った場合、あるいは使おうとしたのが当人に知れた場合、どれだけ教授が気を遣おうと白アルにとってはその全てを否定されたことになってしまう。
もしこの方法を使った・使おうとしたのであればエルシャール・レイトンと白アルの親子仲に大きな隔たりが出来てしまうのは免れない。その事はあらかじめ予想の出来ることである。
ミステリールーム作中では微妙な関係であるレイトン親子。
この方法は使わなかったが別の理由で白アルがエルシャール・レイトンから離れたか、それともレイトン教授がこの方法を使ってでも息子を守り抜いたのか。いずれにせよ、レイトン教授が黒アルへの父としての愛情や真相を知りたいと願う心がある限りは、白アルは彼のもとを離れるしかないのだ。

裁判が不起訴処分となっていたのなら、白アルがレイトン教授に複雑な感情を見せているのは当然の結末ではないだろうか。

降格処分

日本語版では特に階級の記載はないが、海外版では公式ホームページのキャラクター紹介にも階級の記載があり、本編でも何度もその階級を名乗っている。
それによるとアルフェンディの階級はInspector(警部補)である。
29歳の彼の年齢では特別珍しくはないのだが、こちらをご覧いただきたい。

Case report

The actual case file from the murder committed by Makepeace four years earlier,created with great attention to detail by DCI Alfendi Layton.

File.8 事件報告書 英語版より

DCI(DITECTIV  Chief Inspector:警部)はInspectorの一つ上の階級である。
つまりアルフェンディは降格されているのだ。
尚、現実のイギリスで1978年に最年少でDCS(DITECTIVE Chief Superintendent:警視正)となったJohn Stalker氏は1974年34歳でDCIとなり、1982年に最年少でロンドン警視庁のCommander(警視長)となったWilliam Taylor氏は1976年29歳でDCIであったという。
4年前、25歳当時のアルフェンディは異例の大出世街道を歩んでいたことがうかがい知れる。
余談だがスコットランドヤードでのDCI就任初年度の年俸は2018年現在で58143ポンドであり日本円にして1ポンド150円の場合875万円、1ポンド172円以上の場合は1000万を超える額である。

招待状

File.7でソフィと会話をしているアルフェンディはほとんどが黒アルである。
また、ソフィが4年前のバドリオの捜査のためにかぎ回るアルフェンディの姿を見ていた可能性は十分にある。
つまり、ソフィはアルフェンディの本来の人格が黒アルの方であることを知っていた可能性があり、招待状も黒アルが受け取ることは十分想定されていたことだろう。

ソフィからの招待状に一人で来るよう書かれていたからさ。
もし約束を破ったら、病院か学校かルーシーの部屋を爆破すると添えてあった。

File.9 アルフェンディ・レイトン/白アル

この招待状を送ってアルフェンディ・レイトンが本当に一人で来るかは従来であれば賭けである。
ソフィから見ればアルフェンディは「裏で犯罪者と繋がり、都合が悪くなれば裏切って殺す」という人間なのだ。
にも拘らず、ソフィはアルフェンディが一人で訪れることに確信を持っており、ルーシーを閉じ込める罠も用意していた。
4年前の事件の真相を知りたがっている黒アルのならば、それを餌にすれば食いつくだろうが、招待状の文面が白アルが答えた内容がすべてであるのならば、そこに4年前の件に関する記述はないのだ。
ソフィから見る卑怯な人間のアルフェンディに対し、「この文面で確実に一人で訪れる」と確信できる事情があるならば、こういった想定ができるのではないだろうか。

4年前、一人で先行したアルフェンディは、4年後にソフィが送った招待状と全く同内容の手紙を受け取った、と。

もちろん文面は『ルーシーの部屋』にあたる部分のみ変更はされているだろう。
それが父エルシャール・レイトンか、ヒルダであるのかはわからない。

海外ファンの間ではバドリオ・キンケイドの服装がエルシャール・レイトンの服装と酷似していることが指摘されている。

ヒルダとの関係

元同僚であるヒルダ・スワンソン。
「元同僚」「長い付き合い」「closely acquainted for some time(昔馴染み)」とアルフェンディは答えている一方で、英語版の彼女からはこのような発言がある。

My Al was dead.
This was someone else.

File.9 ヒルダ・スワンソン(英語版)

元恋人か、片思いかはわからないが、ヒルダはアルフェンディに恋愛感情を抱いていたのは間違いない。

4年前の事件後、すぐに命を狙わなかった理由

罪は暴露された これであなたは終わり
ただ殺すだけじゃ足りない
あなたは誰からも信用されず 侮辱と不名誉にまみれて死ぬの
そろそろ お別れの時間ね
さようなら

File.9 ソフィ・キンケイド

ソフィは人を殺すことに慣れている。
エンディングで見られるかつての日のキンケイド親子は、強盗殺人を行ったその部屋で写真撮影を楽しんでいるくらいだ。
彼女はアルフェンディの命を狙おうと思えばいつでも殺せただろう。
招待状も送り届けているのだから、彼の住まいもまた突き止めている。

「ただ殺すだけじゃ足りない」このセリフの通り、彼のことは命を奪う以外の付加価値を持たせたうえで殺すことにこだわっている。
実際、父を売った裏切者であるテットリーニファミリーに対しては、組織のNo.2であるハンザ・リオーネに組織を裏切らせ命を奪わせ、自身もまたハンザを裏切り殺すことで復讐を遂げている。
アルフェンディに対しては、彼の身近な人物からの信用を奪い、死後は侮辱と不名誉にまみれる死を望んでいる。

だが、裏を返せばソフィ自身が信用・侮辱・不名誉に強いこだわりを持っているということになる。
ソフィから見てアルフェンディには、強い信用を寄せてくれる人物がおり、侮辱の声もなく名誉を保たれたと見えた。
あるいはソフィは父の死後、ソフィは誰からも信用されず、ソフィないしはバドリオに対して侮辱と不名誉にまみれた言葉を浴びた。
もしくはその両方であると考えられる。

アルフェンディは確かにアルフェンディを信用する人物に守られ、裁判後も職を失わず名誉は保たれたのかもしれない。
しかし白アルにとってそれは白アル自信を信用されなかったことではあるし、職は失わなかったにせよ周囲から隔絶され、同僚や家族とは距離を置くようになった。事件のことを知る人間からは遠巻きにされ心無い言葉もあっただろう。副署長であるリャンからは『危険人物』と言われている。
裁判後の白アルにとってみれば、まさしく「誰からも信用されず 侮辱と不名誉にまみれ」ている状況である。

その状況下にあるアルフェンディを殺すのは、むしろその死が『救い』となってしまうのではないだろうか。
白アルにとっては絶望の終焉。
世間からすれば、真犯人かどうか完全に明らかになっていない状況で他殺体として見つかれば「彼は犯人ではない」という見方を強めてしまうことになる。

おそらくソフィは、待ったのではないだろうか。
アルフェンディ・レイトンを信用する人物が現れる日を。

そうして4年後、ルーシーが現れた。
アルフェンディを慕うルーシーに彼の非道を教え、ルーシーと対峙させる。
この時、ルーシーがアルフェンディへの信用を失墜しているのならばルーシーを生かし、今回とその動機となった事件(4年前の事件)について証言で述べることで、彼の行いを世間公表させるメッセンジャーに。
ルーシーが最後までアルフェンディを信用するならばルーシーを殺し、アルフェンディが犯人であるように仕立てあげて殺す。
予測でしかないが、これが彼女の目的を最も達成できる方法ではないだろうか。